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Apr 24, 2023

全国初のSDGs服育プロジェクト ~半永久リサイクル素材の新体操服が完成

SDGs・社会課題解決に対する自主性・積極性を育む教育環境

リンデンホールスクール中高学部ではESD(Education for Sustainable Development)教育の一環としてこれまで、様々な分野の第一線で活躍するチェンジメーカーを招聘してのSDGs特別授業「インサイト」を継続開催してきました。

特別授業「インサイト」とは

昨年からは全国に先駆けて、地元の有機農家と連携して地球と人に優しいオーガニック給食を通年で開始。また給食には一部プラント・ベースド・フードの提供も始めました。フードロスを減らす取り組みでは、給食時に生徒が自分の米飯分量を決めることができたり、食べ残しはコンポスト(堆肥)にして畑に戻すなどの循環型給食を通じての食育の推進を図ってきました。

オーガニック給食と食育について

新型コロナウィルスが発生する以前、リンデンホールスクール中高学部生たちは、フィンランド国クオッパヌンミ中等教育学校とのアートマイル国際協働学習プロジェクト、フィジー共和国研修旅行での被災した学校改修の支援活動、タイ・ミャンマー国境付近での医療ボランティア活動「GPSA」、世界の社会課題解決ビジネスプランコンテスト等、多岐にわたるSDGs・社会課題解決の活動に積極的に参加してきました。

海外ボランティアについて
生徒の自主的な活動・CASとは

専門家の協力を得て、生徒主体の「SDGs服育プロジェクト」スタート

2021年5月 SDGsに関心の高い生徒の有志メンバーが集い、コロナ禍においても実践できる、持続可能な社会の実現に向けての活動への議論が始まりました。そして、「環境への取り組みを大人たちだけに任せるのではなく、自分たちが主体的に動き、日本全国に広げよう」と、関東で注目のサステイナブル・アパレルブランドのアドバイスのもと、古着をリサイクルしたサステイナブルな体操服をつくる「SDGs服育プロジェクト」を発足させました。

6月のキックオフ会議では、専門家からメンバーに向けてPBL(Problem Based Learning)型レクチャーが行われました。ファッション業界におけるグローバルなSDGsの取り組みや最先端のリサイクルテクノロジーについて、また衣服の大量生産・大量消費や衣服ロスの問題、衣服染料による汚染水の発生などの環境問題や発展途上国の安価な労働力に依存する問題等、多角的視点からの情報提供や問いかけがなされ、現状課題を理解する上で重要な機会となりました。

「私は環境問題を私たちが責任を持って解決するべきだと考えています。途上国を工業化し環境を汚染してきたのは主に先進国です。また、先進国は環境問題を解決するための意識と活動力があります。恵まれた教育も受けることができ、『環境問題』という課題を意識できます。ですから私は今を生きる高校生にできることとして本プロジェクトに参加しました。私たちの世代だけでなく未来の人々のためにも全力を尽くしたいと感じています。(都築マリ彩・高2)」

メンバーたちは衣服にまつわる環境問題と向き合い「今の自分たちに何ができるのか?」を真剣に考え、英語を駆使して世界における衣服にまつわる環境問題のリサーチとディスカッションを重ねた結果、日ごろ学校で着ている体操服をジェンダーレスなデザインへとモデルチェンジすると共に再生生地で作製する事を決めました。

次にメンバーが行動したのは、7月に福岡県北九州市にある日本環境設計株式会社の工場を訪問し、実際のケミカル・リサイクルの現場を見る事でした。日本環境設計は「BRING Technology™」という世界最先端のケミカル・リサイクル技術を開発しています。この水平リサイクルと呼ばれる技術は、ポリエステル素材の衣服をリサイクルして衣服を作り出すもので、従来の技術では数回のリサイクルが限界だったものを半永久的にリサイクルすることを実現化しました。北九州響灘工場では日本環境設計の岩元会長のオンライン講義を拝聴した後に、工場倉庫に大量に送られてくる古着の仕分け作業を見学したり、生産過程に生成される再生ポリエステルのチップに実際に触れたりして、ケミカル・リサイクルの現場を肌で体験しました。また、同日に訪問した北九州市環境ミュージアムでは、工業化による環境破壊をどの様に改善するかを学び、ディスカッションしました。

中高学部生主体のプロジェクトは小学部へも波及

見学後には学校内で、日本環境設計の工場へ送るポリエステル製古着を回収するため、支援と協力を呼びかけました。そして、小中高学部の全生徒にアッセンブリー(全校集会)で活動内容をプレゼンしたり、ポスターを作って呼びかけたりして、多くの保護者のご理解とご協力のもと、約1か月で山積みとなる程の古着が集まりました。

さらに活動の輪を広げていくために、メンバーは小学部の先生方に向けて服育プロジェクトの活動説明会を実施しました。これにより先生方からプロジェクトへの理解を得られ、小学部の「環境科(Environmental Studies)」※1の授業の中で中高学生が小学生に直接、環境問題やプロジェクト活動について話す機会を与えて頂ける事となりました。「環境科」の授業で小学生たちは、先輩たちが一生懸命に話す内容に、時に楽しそうに、時に真剣に聞き入り、一緒に環境問題への解決に取り組んでいこうという想いを、いま募らせてくれています。

その想いの結晶として、SDGs服育プロジェクトを小学部にも展開し、オーガニックコットンを使用した新しいハンカチのデザインコンテストを計画しています。プロジェクトで完成した新しい体操服とハンカチは、2022年春から学校内で販売スタートとなる予定です。

さらに本校の制服に関しても、創業150年の歴史を誇る老舗制服製造メーカーの株式会社明石スクールユニフォームカンパニーのご協力のもと、再生ポリエステル素材への利用を順次進めていき、同社が主導する制服リサイクル活動「Re-Ring School」に参画いたします。

制服によるSDGs教育サポート|1.環境をまもる。|明石S.U.C. Sustainability (akashi-suc.jp)

※画像は2022年から使用する新しい体操服

「サステイナブル」な取り組みをアウトリーチする

ESD教育を通じサステイナブルな社会の実現への取り組みを広めていく上で、毎日身につける「衣服」を起点とすることはドレス効果※2を得ることにも繋がります。個人として、組織として、人間として、私たちは次世代の事を念頭において日々の選択をする事が求められています。子供たちの健全な未来を創造するためには、世代を超えて大人と子供が一緒になり、地球の健康を第一に考えた行動をしていく事が必要不可欠です。その為にも、私たちリンデンホールスクールは、今後「服育」活動を日本中に広めていきたいと考えています。


*1 リンデンホール小学部は文部科学省教育課程特例校に指定されており、地球や環境について考える「環境科(Environmental Studies)」の科目が設置されています。

*2 ドレス効果とは、着用したドレス(衣装)の種別に影響を受け、自身の行動をそのドレスに適したものに変えようとする心理現象のことを言います。

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