リンデンホールスクールの給食では、小学部・中高学部共に、野菜とお米は全て、地元にある有機農法、完全無農薬栽培を行う農園で採れたもの、卵は地元養鶏場の朝採れ、肉や魚は国産のものを使用しています。毎朝届けられる採れたての野菜を使用し、小・中高それぞれのカフェテリア内の厨房で調理しています。
オーガニック給食を実現するためには、有機食材の仕入れ先や生産コスト面、一般的な給食との調理体制の違い(例:旬の野菜しか使用しない献立作り)など、様々なクリアすべきハードルがあります。
給食で使用する野菜には、栄養が偏らないように多くの種類が必要です。一時的な取り組みや一部の食材をオーガニック野菜にすることはできても、毎日、給食用に必要な量のオーガニック野菜を仕入れることは容易ではありません。
そうした中、本校では「子どものからだをつくる給食をオーガニックにしたい」という想いにご賛同いただける地元農園のご協力を得て、学校、管理栄養士、調理師が一丸となり、2020年より一条校で日本初となる通年体制のオーガニック給食を実現する運びとなりました。※
また、食育の一環として、給食で出た野菜や果物の皮などは、生徒がコンポスト(堆肥)にし、それを使って校内にある畑で野菜を育てる取り組みを行っています。それにより、循環型の仕組みを理解し、環境問題やフードロスなどの社会問題にも意識を向けるきっかけになっています。
※ 本校調べ。2020年1月に小学部、2021年1月には中高学部もオーガニック給食に移行が完了
給食部門統括責任者
国内のホテルやレストランで洋食、和食を学んだ後、渡仏。フランス1つ星レストラン等で修行を重ねる。帰国後、複数のホテルやレストランの料理長等を経て、2010年から都築育英学園の料理長を務める。
リンデンホールスクールの給食は、オーガニック野菜を育てる農園の方、旬の食材を生かしながら、子ども達の成長にふさわしい栄養バランスを考える管理栄養士、子どもの味覚に合わせ美味しさを追求する調理師がチーム一丸となって作っています。
オーガニック野菜による給食は、すなわち、全てが旬の食材ということになります。ほとんどの学校給食では、献立に合わせて通年流通するような食材が選ばれますが、オーガニック給食では、自然の摂理に合わせ、季節ごとに採れた新鮮な食材に合わせて献立を考える必要があります。
また、流通されている野菜と違い下処理に時間を要する為、手間がかかりますが、体を作る基礎である食材に妥協しないことは、子どもの成長にとって非常に大切です。オーガニック給食の実現に向け、立ち上げから関わり、試行錯誤してきましたが、地産地消で、生命力の強いオーガニック野菜を使用した給食を子どもたちに提供できることは、料理人として大変なやりがいと誇りを感じています。
管理栄養士
リンデンホールスクールの給食は和食中心です。和食は洋食と比べ、ビタミンやミネラルなど栄養バランスが良く、子どもの時にこそ提供したい献立です。そのような栄養バランスに優れた健康食という特徴がある和食は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。 ただ、子ども達は洋食を好む傾向にあります。どんなに栄養バランスを考えても、食べてもらえなければ意味がないので、和食を子どもが食べやすいようにアレンジする工夫をしています。洋食にありがちな脂質に偏るメニューは避けつつ、素材を生かし、組み合わせの妙を楽しめる料理のバリエーションを考えています。 将来、大人になって自分で食べるものを選ぶ時に、給食での体験が生かされ、体は食べ物で作られていることを意識して、自分の体のために気を遣ってもらえると嬉しいです。
調理師
全日空ホテルで副料理長を務めた後、リンデンホールスクール小学部の調理師に。
オーガニックの野菜、特に根菜類は、土から一生懸命に栄養を吸収しようとして育つので、大地の力がダイレクトに味に出ていると思います。そういった野菜本来の味と食感を残しつつ、子どもにとって食べやすく、美味しいと感じてもらえるような調理を心がけています。 私はホテル・レストラン出身ですが、給食は日常の食事ですので、ホテルで提供するプロの味ではなく、家庭で食べるごはんの延長線上にあるような、やさしく美味しい味付けを大事にしています。子ども達に笑顔になってもらえるような料理を日々、心がけています。
本校の給食では乳製品を一切使用していません。カルシウムは牛乳からではなく食事の中から必要な量を摂取できるよう、管理栄養士が献立を工夫しています。
また、ポタージュスープなどコクを出す必要がある料理には、タンパク質が豊富に含まれる豆乳や豆乳チーズを使用しています。
調味料も厳選しています。味噌と醤油は無添加、酢は有機のもの、油は遺伝子組み替え無しの菜種を一番搾りした油、砂糖はきび糖を、八女や久留米など地元の製造元から直接取り寄せ使用しております。
オーガニックパパ株式会社/代表取締役
一般社団法人オーガニックパパユニティ/代表理事
農園で栽培されている作物は、全て有機農法、完全無農薬です。農園では、日本で農薬が使用されるようになる以前に普通に行われていた、自然界と同じ状態で作物を育てる農法を採用しています。それは、本来自然界の植物と土にあった関係性と同じ仕組みの農法です。肥料には、農園近隣の落ち葉や剪定材、おがくずなど、植物性のもののみを使用。それら炭素資材を土に戻して微生物が分解することで植物が吸収していきます。そのため、土づくりはとても大切。そうしてできた作物は、土から一生懸命に栄養を吸収しようとして育つので、生命力の強い野菜になるのです。
正直、完全無農薬のオーガニック農法と、農薬や一般的な肥料を使って行う農法では、手間のかかりかたは何倍も違います。しかし、人の体の90%以上は水とタンパク質から形成されており、それは食べたものから形成される。そうしたときに、私たちの体を何で形成したいのか。それは当然オーガニックのものではないかと思うのです。特に子どもの時期に何を食べたかというのは本当に大切。その時期にオーガニックにすることで、心身共に健康な体、健全な味覚が形成される。健康を与えることは大人の使命だと考えるのです。
化学物質はほとんどが体に蓄積されて排出されません。現代病と言われるアレルギーやアトピー体質、精神疾患への影響は多大と言われます。私は、食生活が人に与える影響について学校などで講演もしていますが、社会全体がオーガニックに向かうには、食育しかないと思うのです。オーガニック給食の実現や食育へ本気で取り組む姿勢をお持ちの「リンデンホールスクール」は、本当に子ども達のことを真剣に考えていると思い、是非協力したいと思った次第です。
リンデンホールスクールでは、オーガニック給食を提供すると同時に、「食育」にも取り組んでいます。
給食で出た野菜や果物の皮などは、毎年4年生がコンポスト(堆肥)にし、生活(Life Skills)の授業でそれを使って校内にある畑で野菜を育て、野菜の成長観察を行い、発表します。育てたサツマイモを使って2年生が焼き芋パーティーを開催し、1年生を招待して一緒に楽しむということも行っています。
こういった取り組みは、循環型の仕組みを理解し、食材を余すことなく利用する知恵や食べ物の尊さを理解できる心を育み、環境問題やフードロスなどの社会問題に意識を向けるきっかけを提供する場にもなっています。
また、マナー教育の観点では、1年生の時に、管理栄養士による食事マナーの授業も「食育」の一環として行っております。
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